アルザスワインのヴィンテージ
1998年
セレクション・ド・グラン・ノーブルにとって偉大な年
天候
9月の雨は、アルザス生産者のモラルを低下させることはなく、彼らは落ち着きと忍耐強さを保ち、最終的には優れたヴィンテージが誕生したのです。
この年は、非常に乾燥し日差しの強い5月によって、ブドウの生育が早かったために、素晴らしい年になるという予感がありました。
ブドウの生育サイクルは、そのまま順調に進んでいきす。比較的変化に富んだ7月と猛暑の8月が成熟を促進し、非常に珍しい事に一部のブドウが焼けてしまいます。
最初の成熟度検査では、過去10年の間で最も早熟であった1998年と同等の非常に高い糖度を示しました。
収穫
収穫開始日は、AOCクレマン・ダルザスが9月1日。AOCアルザスおよびアルザス・グラン・クリュが9月24日でした。
しかし、9月の雨が成熟にブレーキをかけ、あちらこちらでボトリティス・シネレア菌が発生します。
この年、AOCクレマン・ダルザスの収穫量がさらに増加し、2000年からの定期的な需要の高まりに応える結果となりました。その他、酸味の良いバランスを維持するため、この年生産者はAOCクレマン・ダルザスのアサンブラージュで、リースリングの割合を増やしています。
ヴァンダンジュ・タルディヴおよびセレクション・ド・グラン・ノーブルの収穫量は、前年の記録的な量にはおよびませんでしたが、非常に満足できる結果となりました。この年は初めて、セレクション・ド・グラン・ノーブル(10 929 hl)の収穫量が、ヴァンダンジュ・タルディヴ(10 856 hl)の収穫量を超す結果となり、初秋に大量の貴腐菌が集中的に発生した現象を説明しています。
3つのAOC「アルザス」、「アルザス・グラン・クリュ」、「クレマン・ダルザス」の合計収穫量は、前年を大きく超える1 211 000 hlでした。
ワイン
非常に早い時期に収穫されたミュスカは、ある種の滑らかさと純粋で見事なアロマを持っています。ピノ、シルヴァネール、リースリングの質は、前年とほぼ同様です。素直でアロマティックなワインはバランスが良く、早熟な年としては珍しい、見事な酸度を誇ります。
トケイ・ピノ・グリは凝縮感があり、ゲヴュルツトラミネールは非常に均一的で、濃厚で見事なアロマを有しています。
アルザスワイン委員会(C.I.V.A.)
1999年3月
グラン・クリュ・シュロスベルグ・リースリング・キュヴェ・サント・カトリーヌ・リネディット1998-ドメーヌ・ヴァインバック:
ドメーヌで最も樹齢の高い区画の過熟ブドウから造ったワイン。核果のアロマと火打ち石のほんのりとした香りが加わった煙の豊かな香りを感じる。垂直に伸びるような見事な酸味がもたらす緊張感あるバランスを伴う、溶ろけるような豊満で厚みのある味わい。余韻は長く、柑橘類の樹皮の香りを感じます力強さと爽やかさが見事に組み合わさった、長期熟成型のワイン。(2015年3月試飲)
ゲヴュルツトラミネール・キュヴェ・アンヌ・セレクション・ド・グラン・ノーブル1998-ドメーヌ・シュルンバジェ:
ケスレールで栽培されたブドウを使用。ハチミツと黄色い果実、プルーンのアロマが強烈に香るワイン。アタックは甘く、非常にコクがあり、続いてハチミツとミラベルのジャムのアロマが柔らかさをもたらす、豊かな味わいに変化。桃のアロマと共に甘く長い余韻。熟成によってゆっくりと進化するため、長期熟成が可能です。(2006年7月試飲)
ヴィンテージ1998の個性としては、品種に関わらず、果実味があげられます。キュヴェによっては、貴腐菌の働きによって早く熟成しますが、ゲヴュルツトラミネールとピノ・グリは桃やアプリコット、プルーンなど、核果の優れたアロマを感じさせます。雨の後に収穫されたブドウは素晴らしい成熟度に達しており、この年大量に生産することの可能となったセレクション・ド・グラン・ノーブルは熟成によって素晴らしい進化を遂げます。
ティエリー・メイエ(Thierry Meyer)
2016年、エノテーク・アルザス、講師